(承前:夏の現場)
お寺での作業が終わり、向かった場所は高松市営の墓地です。
庵治石の中目で作られた一尺一寸のお墓です。
正面の文字は南無阿弥陀仏の草書体を浅い薬研彫り(やげんぼり)で彫られています。
やや、おざなり感が漂うのが時代性を物語っているのでしょうか。
薬研彫りは通常戒名や建立年月日などの細字(さいじ:比較的小さな文字)や比較居的簡素な物に対して彫刻する場合に使用されます。
それに対して、正面の文字は薬研彫りで彫る事はあまり有りません。
手彫りで彫る場合は「箱彫り」、サンドブラストの場合は丸彫り(みかん彫りと呼ぶ事もありますがいわゆる商品名に値するので業者によって変わります) といった薬研彫りよりも手間のかかる彫り方が用いられます。
このお墓には猫足がついてます。
作るのが大変なので最近ではまず見ないです。
早速機材を運びたいところですが・・・・
この石段です。
勾配が急な事も有りますが一段一段の踏み代が少ないので私の場合は踵がはみ出してしまうので爪先立って登らねばなりません。
20kgの機材を抱えてここを登るのは平衡感覚が非常に心もとない私にとってかなり危険を伴います。
何を隠そう、10数年前の真夏、に機材を抱えて登ったのですが、登っている途中で機材の突起物やホースがズボンや足に引っ掛かりますし、汗で湿ったズボンが皮膚に張り付いて足が思うように動かせず何度もバランスを崩して転げ落ちそうになった経験があります。
あの時は本当にしんどかった、怖かった。
もういやです。 勘弁してください。
当時は知らなかったのですが、この墓地は荷物運搬用の小道が用意されていました。
階段から80m程離れた場所に小道が有りまして黄色い册から荷物を運べる様になっています。
とは言え、10%位の傾斜で100mを超える距離が有りますので人力だとちょっとしんどいです。
滝の様な汗を流しながら、何往復かして荷物を運んでいたワタクシですが。
荷物をほぼ運び終えた頃、次第に雲行きが怪しくなってきまして、ポツリ・・・ポツリ・・・
と、雨粒が落ちてまいりました。
見る見るうちに、本降りになってしまい、とりあえ
ずお墓にはビニールシートをかぶせて濡れにくいようにして軽トラに避難しました。
降雨時間は30分ぐらいでしょうか。
お墓はあまり濡れませんでしたが機材はびしょ濡れでブラスト用の砂が湿ってしまいました。
一時は作業延期も考えたのですが濡れたお墓をトーチで暖めて乾かすと作業可能と判断しました。
乾かしてゴムシートを貼り付けます。
昔に彫っている文字は5人割りでレイアウトされていたのですが何故か年月日が歪んで彫られており不自然過ぎるので今回は7人割りのレイアウトにしました。
これで、あと2名追加彫りができますので、ご夫婦分が確保できます。
サンドブラストで文字を彫る場合は圧搾空気が必要になります。
軽トラに積んでいるコンプレッサーからホースを引きます。
今回の様に雨に降られて湿度が異常に高い場合は結露が酷くサンドブラストに不向きです。
工場に持ち帰って作業する場合は結露しない様にドライヤーを内蔵した大型のコンプレッサーが使えますが現場作業ではそうはいきません。
そんな事も有り、ホースは短いほど作業性がいいので急勾配の階段に敷設しました。
彫ります。
彫ります。
となりのお墓が接近しているので作業性が悪いですががむばって彫ります。
モスキートさんが沢山いますが蚊取り線香が雨で湿気ってしまってあんまり効果がないですががむばって彫ります。
クリックででっかくなります |
若干となりの戒名との間隙が少ないですがまぁこんな物でしょう。
既に彫っている文字にならって塗装はしません。
昔、手彫りの時代は文字に塗装する事は有りませんでした。
手彫りの場合は底がはっきりするので文字が見易い事も有ります。
それと、手彫りした文字の場合は彫った文字の縁が細かいガタガタになっているので塗料で色を入れると滲んだ様に見えてあまり綺麗ではありません。
今回は、お墓や周囲が雨で濡れてしまっているので飛び散った埃の掃除が大変でした。
あまりにも大変だったので撮影する余裕も有りませんでした。
本日の日中の摂取水分量。
糖分控えめ。
墓石、記念碑、表札等の石材への文字彫刻に携わっています。
戒名等の出張彫り承ります。基本価格¥20,000~
和泉字彫店
高松市牟礼町牟礼3720-133
087-845-3871
090-2780-1671
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